公開日:
2025/12/11
エージェントの流儀 AI×SNS 時代に求められる関係構築力と発信力 〜潜在層の心を動かす「ナーチャリング」の極意とは?〜

公開日:
2025/12/11
エージェントの流儀 AI×SNS 時代に求められる関係構築力と発信力 〜潜在層の心を動かす「ナーチャリング」の極意とは?〜

2025年10月29日、株式会社morichと株式会社XAION DATAの共催で「エージェントの流儀 AI×SNS 時代に求められる関係構築力と発信力」と題したオフラインイベントが開催されました。
本イベントでは、3万人以上のキャリア相談・支援実績を持つ株式会社morich代表の森本千賀子氏と、オープンデータを活用したAI採用支援プラットフォーム「AUTOHUNT」を提供する株式会社XAION DATAのCFO/CSOである金谷優樹、モデレーターとして株式会社XAION DATAのCRO奈良慎太郎が登壇。
AIやSNSが普及する現代において、転職エージェントに求められるスキルやマインドセットについて、リアルな経験談を交えながら語られました。本記事では、その模様を詳細にレポートします。

求める求職者と出会う方法とは?セルフブランディングの重要性
奈良:では、最初のテーマ「求める求職者と出会う方法」について、森本さんからお願いします。
森本:最終的には「AUTOHUNTを使ってください」という話になるのですが、その前提として、これはものすごい魔法のツールなんです。
でも、AUTOHUNTを効率よく効果的に使っていただくには、ご自身のセルフブランディングを掛け合わせないと最大効果にならないと感じています。
私は20代の時に「これからはブランドの時代だな」と気づきました。当時はデータベースもなかったので、人脈やネットワークを構築しないと独立できない。そこからセルフブランディングを意識してきました。
セルフブランディングを行う上では、「この人だったら信頼できる」「ほかにはない情報を持っている」「自分が見えていない可能性を見出してくれるかもしれない」と思ってもらうことが大事です。
たくさんのスカウトが飛んできたときに、「あ、この人だったら」と思ってもらえるイメージをブランド構築してきました。当時は本を書くとかテレビに出るといった大げさなことしか発信手段がありませんでしたが、今は手軽に無料でできます。Facebookも出た当初から、LinkedInも日本でほとんどまだ誰も使っていない時からトライしてきました。

最初はとにかく何か小さなことでも情報発信を心がけていましたが、今感じているのは「いかに共感を作るか」ということです。そのためのツールとしてSNSを活用しています。自分のブランドを作り、信頼を築くことがまず1つ。もう1つは、自分たちがスカウトするのではなく、「森本さん、お願いします」と向こうから言ってもらうことが大事だと思っています。
そのためには、日々の鍛錬というか、とにかくいろんなところに出向いて人との接点を増やす。セルフブランディングと接点を増やすことを両方やっていると、どこかのタイミングで臨界点を超えるんです。名刺交換した時に「知ってます」「記事見てます」「LinkedInでフォローしてます」と言っていただく回数が本当に増えてくる。それが皆さんのセルフブランディングが浸透してきたというエビデンスなのかなと思います。
信頼度を高める「つながりの数」と「自身の開示」戦略
金谷:私は森本さんほど歴が長くないので、テレビに出たり、本を書いたりはできないのですが、2年前にエージェントをやった時は、まず相手のカテゴリーを絞っていました。私は外資系にいたので、業界は金融やコンサル、年代は20〜30代といったような感じです。
候補者時代の目線で言うと、当時はひっきりなしに電話がかかってきました。会ってもいいかなと思うのは、自分の周りの人も会っているとか、自分の周りとつながりがあるヘッドハンターのみでした。LinkedInで意識したのは、つながりをめちゃくちゃ増やすことです。
つながりが100人のヘッドハンターと5,000人のヘッドハンターでは、返信率が全然違います。共通の知人がいると表示されますが、金融とコンサルの共通の知人が増えてきた頃から、返信率が上がってきました。
昔のヘッドハンティングは、誰と誰がつながっているか、どういうリレーションがあるかという、人と人のつながりがとても重要だったと思います。そのためセルフブランディングを確立し、自分がどこのポジションで、どこの人とつながるかを意識していました。

森本:私のホームページを見ていただくと、私が丸裸になっています(笑)。どういうスタンスで生きてきたか、どういう哲学を持っているかを、制作会社さんが作った言葉ではなく、自分の言葉で語っています。FacebookやLinkedInの投稿も、誰かに読んでもらうためというより、備忘録かねて自分の想いを感じたままに綴る・・必要な誰かに届けばいいな・・くらいに思いながら書いているんですが、特徴はとにかく長いです(笑)。
一つの記事に対して、「こういうことがありました」ではなく、「そこに対して自分はどういう想いに至ったか」「どういうふうに感じたか」を細かく表現しています。 ランチ一つとっても、誰とランチしたかだけじゃなく、その人がどういう人で、私との関係がどうで、その人に対してどう思っているかまで書きます。
そのため、初めてお会いする方から「Facebookフォローしてました。実は息子のケンケンの大ファンです」と言われたりします。私のプライベートなことも理解していただいた上で、「この人だったら自分の人生を預けていい」と思ってアプローチしてくださることが多いです。紹介も多く、その方が「森本さんと〇〇さん、つながっているよね」と、共通の知人にお願いしてつないでもらうケースもあります。
偶発的な出会いを必然に変える「計画的偶発性理論」の実践
森本:これを言うと「えっ」と思われるんですが、私は「計画的偶発性理論」を本当に信じていて、たまたまの偶然の出会いをいかに必然にするかを大事にしています。
例えば、新幹線の座席。ABC席とDE席がありますが、皆さんはどこの席を予約しますか? 私は必ずB席を予約します。飛行機も必ず真ん中です。コロナの時は空いていたので、A席やC席の人が「なんでわざわざB席に座るの?」と驚くんですね。そうすると、例えば東京から新大阪までの間にその人とめちゃくちゃ仲良くなるんです。
意外と他人の方が自分のことをオープンに話せたりしませんか? 新幹線を降りたらもう一生会わないな~と思うので、意外と素直に何でも話せたりするんです。私は話しかけるきっかけにアメちゃん(飴玉)を使います。「いかがですか?」と言うと、今までもらってくれなかったことは一度もありません。それで結果的にキャリアの相談になることも多いんです。私のことを知らない方が大多数ですが、聞き出すのがうまいなと思われながら話されているうちに、転職相談になり、実際に転職をお手伝いさせていただいた方も10人を超えています(笑)。
セミナーで隣に座った人にも必ず話しかけます。これだけの席がある中で横に座ったのは、何かしらの引き寄せだなと量子力学を感じながら。そういうところから本当に出会いは生まれるんです。

奈良:なかなかハードルが高いですね。
森本:これはもうトレーニングだと思って、皆さんもやってみてほしいです。常に5〜6種類のアメを持っています。電車に乗る時も、空いている席の中から「幸せオーラ」が出ている人の横に座ります。これは長年意識していると感じるようになります。
幸せは伝播するので。この仕事は24時間365日、全ての出会いがきっかけになると思っています。その人が転職しなくても、「僕の弟が」「後輩が」と相談につながるケースはめちゃくちゃあります。
会いたい人に会うための「人脈術」
奈良:お二人の話に共通して「人脈」という言葉が出てきましたが、意識して人脈を作っていくためのコツはありますか?
森本:人脈だけで3時間コースなんですが、まとめますね。まず、「6次の隔たり」という統計学のデータがあります。会いたい人に6人を介せば会えるという統計学の世界でいわれていることなんですが、SNSが発達した今、2.5人先に会いたい人はいると言われています。
だから、会いたい人がいたらとにかく発信することです。「この人に会いたい」「この人知りませんか?」と色々なところで発信すると、意外と身近なところにいます。
それから、薄くてもいいから絶対につながっておくこと。 名刺交換したら、徹底してFacebookやLinkedInでつながり、一言メッセージを送る。その時にインパクトを残さないと覚えてもらえないので、ブランディングが重要になります。
私は基本的に赤色の服を着ていて、クローゼットの9割が赤です。名刺も真っ赤で、覚えてもらいやすいように工夫しています。
リクルート時代も、総務に怒られながら、名刺に自分の顔写真シールを貼ったり、勝手に肩書を作ったりしていました。そうやって薄くてもつながっておくと、何年も会話がなくても、連絡すれば3分後には返事が来たりします。つながっておくことは本当に大事です。

金谷:人脈とは少しずれるかもしれませんが、エージェント的な売上に近いエピソードがあります。海外のMBAに行かれる方の不安は就活なんです。
すぐにお金にはならないので、普通のエージェントは声をかけませんが、私はLinkedInで結構、就活相談に乗っていました。1年越しで決まることもありますし、ギブの精神でやっていると、他の方を紹介してくれるんですよ。
下心が1割、9割は下心がない状態でカジュアル面談を受けていくと、中長期的に結果につながることがあります。今年それで2名決まっています。3ヶ月後じゃないものをどう取るか、という感じですね。
森本:私は面談した直後に、その場でFacebookでつながってもらいます。今はほとんどメッセンジャーでつながっていて、やり取りがより友達感に近くなります。今の平均在籍年数は13年で、一生涯で3回は転職すると言われています。
いま接点がなくても、次のタイミングで声をかけていただいたり、知り合いを紹介していただいたり、転職先で採用に困った時に連絡が来たりします。
潜在層へのアプローチと「キャリアの選択肢」の提示
奈良:では次のテーマに移っていきましょう。テーマ2つ目は、「ナーチャリングのコツや、AI×SNSの使い方は?」です。ナーチャリングとは、育成や定期接点といった意味のマーケティング用語になりますが、最近注目が集まっていますよね。こちらはいかがでしょうか?
森本:AUTOHUNTでご縁のあった方は、やはりすぐには転職される人は多くはないです。「すぐに転職は考えていないし、他社とコンタクトも取っていません」という方がほとんどです。でも、私が発信したものに反応されたということは、何かしら自分のキャリアに興味関心があるということです。そこで、「より良い」とは何なのかを、細かく分解していきます。

最初は全く転職を考えていなかった方々が複数、結果的にAUTOHUNT経由で転職されています。今の時代、キャリアのことは皆さん関心事ですし、友人知人が転職したり起業したりするのを目の当たりにしているので、「もっと違う選択肢があるんじゃないか」と感じる場面は増えています。
私は転職したいという方でも、しないほうがいいと思うケースでは「絶対にしない方がいいです」と伝えます。一方で、「この人はもっと輝ける」と思った時は、全力で可能性や目指したいGoal(頂上)に向けての山の登り方を一緒に考えます。
その方のキャリアビジョンやゴールを共有し、プランB、プランC、プランDといった登り方の選択肢を提示すると、何かあった時に思い出してもらえます。
潜在的なWILL(意志)を引き出す深いヒアリング技術
奈良:森本さんは潜在層を顕在化させるプロだと伺っていますが、そのポイントは何でしょうか?
森本:その方が「あっ」と思う瞬間は、やはりWILL(意志)を可視化することかなと思っています。その方の琴線にどうやって触れるか。潜在的に持っている「実はやりたかったこと」「叶えたかったこと」を引き出すことです。
先日も、非常に優秀な方がいらっしゃいました。他のエージェントからは王道のCMO案件などを紹介されていました。でも、休日の過ごし方や今関心あることを聞いていくと、「推し活」をしている、と。そこでピンときて、あるエンタメ系の会社を提案したら、ものすごく反応されたんです。「どこのエージェントからもその案件は紹介されませんでした」と。結果的に、給料は一番低かったのですが、その会社に行くことを意思決定されました。
AUTOHUNT経由で決まったマーケティングのプロフェッショナルの方もそうです。他のエージェントからはCMO案件がずらっと提案されていました。でも、マネジメントスタイルなどを聞いていくと「人」や「組織」というキーワードが出てきたんです。人の成長への関心が強かったことと、チームビルディングへの強いこだわりがあったので、HRビジネスのトップ(社長)という、今まで経験のないポジションを提案しました。両方からオファーが出て、最後まで悩まれていましたが、最終的にはHRビジネスのトップとして転職されました。その方の仕事観や人生観を紐解きながら、どこに琴線があるかを探っていく感じです。
複数回コンタクトの重要性と「感情の波」の活用

奈良: ナーチャリングに関する論文では、平均4回目で返信が返ってくると言われています。複数回アプローチすることは重要ですね。
森本:特にAUTOHUNTでアプローチする潜在層については、複数回コンタクトすることが必要です。2回目で返ってくる方もいれば、4回目という方もいます。ただ、それをLinkedInで毎回管理するのは大変です。AUTOHUNTが優れているのは、それが一斉にできてしまうところで、ものすごく効率が良いです。
正直、皆さんも日々スカウトされて、ものすごく低い返信率じゃないですか。その労力を、もっと本当に必要としてくれるであろう人に使った方がいいなと思っています。
私は他転職媒体での返信率は30%ぐらいですが、すでに応募先がずらっと並んでいる中で、あえて私から提案するのは難易度が高い。それよりも、潜在的な方とタイミングよくお会いして、その方が輝く場所をご提案する方に労力を使いたいと思い、AUTOHUNTを使わせてもらっています。
金谷:AUTOHUNTは3回、4回送る前提のUI/UXになっています。私は去年の8月に最初にスカウトした方に、今年の4月に入社していただきました。3ヶ月ごとに送ると決めていて、お盆、年末年始、年度末といったタイミングで送ります。8月、10月と送って返信がなく、1月に「年が変わりましたがいかがですか?」と送ったら、「実は最近考えていて」と返信があり、面談につながりました。
あとは、アナログな接点も重視していて、ランチに行ったり、決まった後にディナーに行ったりすることも意識的にやっています。
森本:人には感情の波があって、仕事が順調な時もあれば、上司や社長のことも色々思うことがあるときもあります。少し気持ちが下がった時に第一想起してもらえるか。そのタイミングは読めないので、3ヶ月ごとというのは理にかなっていると思います。
まとめ
本イベントでは、AIやSNSが進化する現代において、転職エージェントがどのように価値を発揮していくべきか、具体的な手法やマインドセットが語られました。
森本さんの話からは、ツールを最大限に活用するための前提として、個人の「セルフブランディング」と「信頼構築」がいかに重要であるかが浮き彫りになりました。また、計画的偶発性理論の実践や、相手のWILL(意志)に寄り添う深いヒアリングなど、アナログな人間関係の構築こそが、唯一無二のマッチングを生み出す鍵であることが示されました。
一方、金谷さんの話からは、AUTOHUNTのようなツールが、これまでアプローチが難しかった「潜在層」への扉を開き、ナーチャリングを効率化することで、エージェントがより本質的な業務に集中できる環境を提供することが語られました。
これからのエージェントには、テクノロジーを使いこなしながらも、人間ならではの共感力と関係構築力で求職者や企業に深く寄り添う、「オールラウンダー」としての姿勢が求められるのかもしれません。

当日ご参加いただいた皆様、ありがとうございました!
AUTOHUNTでは、転職エージェントの皆さまの日々の業務に役立つようなセミナーや、横のつながりを強化いただけるようなイベントを、定期的に開催しております。ご参加ご希望の方は、イベントページをご確認ください。
▼イベントページはこちらから
https://agt.autohunt.jp/event
撮影場所:WeWork 赤坂グリーンクロス
撮影:東慧紀
執筆:新國翔大
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